※前半:天草視点
※後半:戦人視点
まるで子供が玩具を欲しがるように。
俺も、彼が欲しかった。
「天草」
俺の名前を呼ぶ、彼の綺麗な首筋に、自分の所有物だという印を付けてみたかった。
相手が高嶺の花であろうと、強引にその座から引きずり落として。
俺の物にしたかった。
「おい…天草?大丈夫、か…?」
「………」
そんな事、俺が考えてるなんて事を知らない彼は無防備な顔で俺の顔を覗き込んでくる。
それに釣られて俺の視線は彼の首筋に。
健康的な、それでいて誘うような妖しい雰囲気を放つ首筋。
くらっとするような色気だ。
これでいて彼は自分の色気に全く気付かない。
「―大丈夫ですよ。少し考え事をしてたんです」
「考え事ぉ…?」
「ひゃっは、何ですかその顔。俺だって考え事の一つや二つしますよ」
特に、戦人さん。アンタが絡むと。
言い掛けて、黒い感情と共に心の底に仕舞い込む。
(ああ、駄目ですねぇ)
「あ!そう言えば今日、縁寿と約束があるんだ」
「縁寿さんと?」
「ああ。映画見に行くんだぜ!」
(黒い感情なんて、いつでも湧く)
止めどなく、いとも簡単に。
過激な行動に出ようとする自分自身を、俺が何回抑えてきたと思います?
もう数えきれないくらいだ。
「映画…ですか」
「ほら、縁寿ってそういうの疎そうだろー?」
妹の事を話す、家族の事を話す戦人さんの顔を直視してしまう。
楽しそうな表情だった。
俺と居る時よりも、何倍も何十倍も。
「……そうですね。楽しんで来てください」
にこっと作り笑いを浮かべる。
彼は気付かないだろう。
ああ、そうだ。
だってこの人は鈍感で、いつでも俺の心を無意識に壊すんだからなぁ?
(…可愛いもんだ)
(幸せですね、気付かないでいられるなんて!)
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