「……あ、…ああ!楽しんで来るぜ!」
そんな戦人さんは俺の顔を見て、大きく頷き言う。
そこで「お前も来るか?」と言って欲しかったんですけどね、俺は。
自分から行きたいなんて言って、貴方たち兄妹の邪魔するなんていう無粋な真似したくありませんから。
そこまで卑怯じゃないんで。
「ところで、なんの映画を見るんですか?」
だが、気にならない訳ではない。
だから少しだけ、ほんの少しだけ干渉してみる。
すると彼は「えーっと…」と考え、映画のタイトルを言った。
確か、そのタイトルは恋愛物の筈だ。
「ほら、最近の女の子って、そういうの好きなんだろ」
どくんっ
心臓が高く跳ねた。脈が速くなる。
ああ、なんでこんなにも動揺しているんだ。
「……縁寿さんもそういうのが好きとは限りませんよ。まあ、どちらにしろ、そういうのって彼氏と見るもんでしょう」
視線を逸らして、早口で捲し立てるように言う。
そして墓穴を掘る。
「えっ!…あ、…そうなのか?」
明らかに『彼氏』という所に過剰反応を示した彼を見て、窒息しそうになった。
(あああ、ああ!)
(なんでそんなにもアンタは綺麗なんですか!どうして俺みたいに黒く染まってくれないんですか?)
「でも、縁寿なら…きっと俺とでも喜んでくれるよな!なあ、天草?」
どうして。
「ハイ」
機械的に、反射的に呟いた。
さぁっと自分の顔から笑顔が引いた事くらい理解できた。
戦人さんはやはり気付かない。
気付いていない。
彼は、俺の事を誤解しているんだ。
あるいは過信しているのだろう。
「じゃあ、俺そろそろ用意してくる!」
ばたんっ
扉が目の前で閉まった。
それに続いて階段をどたどたと上がっていく音。
「……無能ですねぇ」
それは自分にか、彼に呟いた言葉なのか。
「平行線は」
それとも自分たちに対してなのか。
平行線はいつまでも平行で
(交わることは無い?)
(じゃあ、無理にでも交わるようにしますよ)
「帰ってきたら…感想聞かせて下さいね。それによって、俺は――」
怒りで吼えるか、貴方を壊すか。
それは俺自身にも分からない。
貴方を愛したいと思っていた俺は、今や、貴方を自分の物にしたいだけの狂った人間なのだから。
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